高野川に沿って走る鯖街道と呼ばれた若狭街道を、京都市中から北へおよそ十二キロ。八瀬を通り抜けしばらくすると、比叡山麓の小さな盆地に辿り着きます。のどかな山里風景が広がる大原です。
春には野道にシャクナゲが咲き、キリシマツツジが鮮やかな花をつけ、夏には青田に挟まれて、紫色の紫蘇畑が大原の里に彩りを添えます。
そして秋になると参道の木々は紅葉に染まり、冬には雪景色へと移り変わります。
三千院を挟んで流れるふたつの川、右手の川が呂川、左手の川が律川。
声明の呂(呂旋法)と律(律旋法)にちなんで付けられたその川の上流にある滝が、音無の滝(おとなしのたき)です。
その昔、聖応大師良忍が滝の前で声明の練習をしていた際、その美しい声明の音律が滝の音に同調して音が消えて無くなったと言われ、以来、この滝を「音無」と名づけたと伝わります。
呂川上流には、来迎院本堂、来迎院の支院(里坊)蓮成院や、融通念佛寺の旧跡である浄蓮華院、そして律川を挟んで北には、勝林院本堂、勝林院の支院(里坊)宝泉院、實光院などがあります。